「絵里は視覚を、準くんは命を失ったわ・・・。」
準くん・・・少女は確かにそう呟いた。目が見えてなくて、俺と準を間違えたって訳か。
「でね、準クンと君、声がそっくりなの。それにまだ・・・・準クンが亡くなった事、絵里に伝えられないままで・・・。ごめんね。」
他人事と言えば、それで終わりだと思う。実際、俺には何の関係もない。
 でも、可哀想だよな。幸せだった日々や、視覚を失って、それを一緒に乗り越えて超えてくれるはずの大切な人さえ失ってしまったら。
 一瞬、背中にゾクッと悪寒が走る。
「巻き込んでごめんなさいね。また絵里が失礼なことしたら、キッパリと『別人だ』って言ってくれて良いから。」
「はぁ・・・・。」
あいまいに返事をする俺は、母親の話など聞いてはいなかった。
 俺は考えた。
幸せを失う直前まで、大切な人と、そばにいることが出来た少女。


その瞬間まで、少女は幸せだったんだろうか・・・・?