急に涙を流す律に、空は驚き慌てる。


「どうした! どっか痛むのか?!」

「違うの。姫様が」

「姫?」

「死んじゃっ…」

「落ち着け、真空。何があったんだ?」

「姫様が、蒼さんとお別れした後に倒れてっ」

「天野が…」

「あんまりだよ!」


 律は空に縋りついて泣いた。


「私何も出来なかった。蒼さんは姫様が結核だって知らずに戦に行ったの。姫様が待っていると信じて、生きて帰ると約束して行ったのよ!」

「結核…」

「どうしてあんな結末なの? 両想いなのに、誰からも祝福されないで、姫様は独りで逝ってしまった」

「真空…。目の前で、見て来たんだな」

「相模。胸が痛い。心が苦しいよ」


 空はどんな言葉をかければいいのか分からず、戸惑う。が、それも少しの間だった。

 すぐに直感したのだ。


「真空。アイツ、笑ってた?」


 奏の事だと分かると律は頷き、それを受けた空は続ける。


「なら、良かったんじゃないか? 俺はそう思う」

「相模…」

「最期に笑えたんなら、最悪な人生でもなかったんだろ」

「っ、うん──」


 笑っていたならきっと、少しは幸せだったはず。空らしく客観的な言葉が、妙に律を安心させた。

 何も出来なかったけれど、少しは力になれたのかもしれない。

 二人はそう思い、青い空を仰ぐのだった。





*End*