フェルナンドの負けず嫌いさを、シークラントはよく知っていた


「そうですか」



「あ、今馬鹿にしましたっすよね?」



適当に受け流すと、それに引っ掛かったのかフェルナンドがムッと顔をしかめる


「…別に。それより、敬語を話すか、話さないかはっきりしてくれないか」



「え?ぁー…一応、王子様だし?敬意払っといたほうがいいかなーと」



「お前が、一度でも敬意を払った態度をした覚えがない」



「えー…めちゃくちゃしてるっすよ?…多分」



「…多分なら、むしろするな」



へらへら笑うフェルナンドをシークラントは睨みつける


「はは。じゃあー…幼なじみのよしみってことで」



「…お前と幼なじみとは、甚だ情けないがな」



「ひでっ!!シーちゃん、そりゃないよ〜」



たちまち、馴れ馴れしく話し出すフェルナンドに、溜め息が出る



(こいつの切り替えの早さは天下一品だな…)



まぁ、元々敬意なんてものがないのだろうが




「で、そのフォルという少年に一本とられたわけだ」



「とられてないって。お互い、引き分けただけで」



「へぇ」



フェルナンドがこうもあっさり引き分けを認めてくるとは珍しい


いつもは、もう何回か勝負しないと認めないのだが…




「会ってみたいな」



「今度来てみ?暇ある時はこっちの朝稽古に顔を出すみたいだしよ?」



「そうするか。…でも、これからあまり時間は取れないかもしれない」



「あー、五人の妃候補の相手しなきゃなんねーもんな?」



「……」



頷く代わりに渋い顔をするシークラントに、フェルナンドは、ハハハと笑う


「ま、お前がその本性出せば一発で破談になんじゃね?」



「……そうしたいが、父上に止められている」



「…手を読まれたわけか、さすがだなー」



「とりあえず、適当に接して適当な時期に帰すさ」