「お前、なかなか面白い奴だなー。あの熊みたいなオッサンは、警備兵の隊長でデボンって言うんだ。俺はフェルナンド。よろしくな、坊主!」


フェルナンドは豪快に笑うとアリュエインの頭をぐりぐり撫で回しました。


(そんなに触られたら帽子とれるってー!)


慌てて帽子を目深に被り直した後でアリュエインはニコッと笑顔で応えました。



「僕はアリュ……じゃない……えっと…フォルトマって言うんだ!フォルって呼んでほしい。」



「フォルトマかー。坊主にしちゃ、なかなか上品な名前だな!!」



(危ない…!!思わずアリュエインって言いそうになったから兄様の名前を言っちゃった!………ま、まぁ…たぶん…ばれることはないよね…?)



「は、はは。本当だよ。僕には上品すぎてさ…。だから、できればフォルって呼んでほしいんだ。」


「分かった!じゃあ、フォル!一緒に稽古やろーぜ!」


「え…いいの??」


(フェルナンド…あんなに警戒してたはずなのに……いきなりフレンドリーになって…どうしたんだ?)


目をパチクリさせてフェルナンドを見るアリュエイン、そして熊―…もといデボンが慌てた様子で、
「おい!何勝手に言ってんだ!!」
とフェルナンドに詰め寄りました。



「確かにこいつは小さい子供だ。しかし、身元が分からないようでは…「大丈夫だって、タイチョー。フォルの服、よく見たらそこらのガキよりは、いいもん着てる。何より、その剣にカシェルク領の印の百合の花が彫られてる。なんなら、後でカシェルクから来た人に確認すればいーよ。」


フェルナンドの言葉にデボンは”うーん”と唸りました。
そして、アリュエインの剣の柄に彫られた”百合”を確認したあと
「分かった。何かあればお前が責任とれ、フェルナンド。」
と頷きました。


「オッケー、隊長!んじゃ、フォル!やるぞー!」

「うん。ありがとう、フェルナンド。あと、デボン…さん。」


デボンはやれやれと首を振りました。

「あいつの人を見る目は確かだからな。でも、いいか。フォルトマ、お前が妙な真似をしたらすぐに牢屋行きだからな。」

「はーい!」

アリュエインはビシッと手を上げて応えました。