動揺しまくりのアリュエインを熊は、鋭い目付きで睨んでいました。


「お前、誰だ?新人兵士ではないよな。ここは王宮の中だ。何でお前みたいなガキがいる。」


「そ、それは…」



フェルナンドと呼ばれる青年は何気なさを装いながらも、アリュエインが逃げ出さないようにしっかりと後ろにはりついていました。

前には熊。

逃げるのは不可能でした。



(くっ………も、もう…一か八かだ!!)



「僕は、カシェルク領から来たアリュエインお嬢様の従者だ。」


「カシェルク領の令嬢の…?」



熊もフェルナンドもアリュエインをまだ疑わしく見ていました。


(こんな13歳くらいのガキが??)


「マジかよー?」


フェルナンドはじっと目を細めてアリュエインを見ました。



「本当だ。なんなら、アリュエインお嬢様やその侍女であるシャナ嬢にも聞いてみてくれ。」



堂々としたままのアリュエインに、熊もフェルナンドも嘘ではないと思ったのか、鋭い目を少し緩めました。



(ふー…助かった。自分のこと”お嬢様”なんて気持ち悪いけどな!)



「じゃあ、何でお前はこんな場所にいたんだ?」


「それは、僕、剣の修行をしていたんだ。部屋でやるとお嬢様たちに迷惑だから。」


「そうか。……うむ、分かった。そんなに怪しい奴でもなさそうだしな。」


熊が納得したように頷きました。
フェルナンドも、へらっと笑っていました。ただ、その目はまだ油断なく光っていましたが…。


(なんとか乗り切ったかぁ。……あ!そぉだ!)



「あの、熊さん!!僕も一緒に稽古させてください!!」


「「く、くまぁ!!?」」



すると、いきなりフェルナンドが吹き出して笑い始めました。


「く、熊!!熊だってよぉー、隊長ー!!ぎゃはははははは!!!」



「く、熊……」


爆笑のフェルナンドとは対照に熊は落ち込んだようにうなだれていました。



(僕、変なこと言ったかな?)