保健室のドアを開けると
校医の先生はいなかった。
薬品の独特な匂いが漂う室内は
ひっそりしている。
勝手知ったる薬の棚に
近寄ろうとして
棗はふと足をとめた。

2つあるうちのベッドの1つが
カーテンで仕切ってある。
色は詳しく見えないが
何かの気配を感じた。

棗はそっとベッドに近づく。
中から男の声が聞こえた。

「先生、すごくキレイだよ。
俺のモノにしてあげるよ。
ココロも、カラダも、ね」

眉間にしわを寄せて
棗はおもむろにカーテンをひく。
中にいたのは朝の男と
校医の先生だった。

突然のことに男は
一瞬驚いたようだったが
立っていたのが
棗だと認めると朝の子だ、と
笑顔を見せた。

その笑顔がすごくウソ臭く
棗は感じた。

男が笑顔のまま
どうかした?と聞いてくる。

「…保険室は気分の悪い生徒が
くるところですけど」

「気分悪いの?
俺が治してあげようか?」

男は大袈裟に言って
棗の腰に手を回し
強引に自分の方へ
引き寄せようとした。