パチンと指の鳴る音。

学校で見た女生徒のように菖蒲は
ふらふらと部屋を出て行く。



ホッと棗は肩の力を抜いた。



クローゼットからひょこっと
玲が顔を出す。


「助かっただろ?」

「…あなたが音を
立てたんでしょ…」

「俺が音を立てないと
殴られてただろ?」


棗は深くため息をついた。


「……いつものことよ」

「やっぱり人の心が
よめるんだろ?」

「…そんなもの見たくもない」



少しの沈黙の後、
棗は話し出した。



「わたしが見えるのは
…人の感情の色…」