棗は自室で机に向かっていた。

高校の勉強はすべて終えていたが
それ以外にも
勉強することは山ほどある。



ふと、夜の闇とは違う色を
感じ取って棗は顔を上げた。

窓を開けると遠くで
ドーベルマンの声がする。

空を見上げれば
漆黒の空に薄黄色の丸い月。

照らされた庭の木々が
地面に影を作っていた。



吸いこまれそうな夜の静寂。



「…その辺にいるんでしょう?
出てきなさい」

棗の声が響く。
辺りは相変わらず静寂のままだ。




「こんばんは」




後ろから聞こえた声に
慌てて振り返る。