家族よりも
長い時間を過ごしてきた柊を
棗はとても信頼していた。

本来なら送り迎えは
運転手の役目だが柊は
棗の移動には必ず同行する。
めったに外に出ない棗を
心配してのことだった。

それにしても、と柊が呟いたので
棗は閉じていた目を開けた。

「お嬢様の能力にも
調節がきけばいいのですが」

「調節?」

ルームミラー越しにこちらを
見る柊と目が合う。
その目が柔らかく微笑んだ。

「誰にでも全力で頑張る時と
手を抜く時がございます」

柊が柔らかい声で
棗に語りかける。
棗は小さく頷いた。

「お嬢様の能力もご自身で
調節することができれば
その様にご体調が悪くなる事も
減っていくと思われるのですが」

「調節ね…考えた事なかったわ」

今まで考えた事のない意見に
棗は俯いて考えた。