「そういえば、血が欲しいなら
中川先生のをもらえば
いいんじゃない?
先生なら多少血をとられても
平気そうだし」

「ふ、ふざけんな。
男の目を見て
暗示をかけるだけでも
屈辱的なのに
血なんか吸えるか!
俺は女にしか興味ないっつーの」


ピリリリ。

棗の携帯が鳴った。

「…着いた?わかった、出るわ」


何事もなかったように
棗は黒髪をひるがえし歩き出す。


「だから、聞けよ!俺の話を!」


玲の声だけが
玄関に空しく響いた。