しかめ面をしながらも
玲はそれ以上何も言わなかった。

黙ったまま棗に歩み寄る。

流れるような黒髪を
そっと手に取った。

玲は棗のネイビーの瞳を
じっと見つめる。
少し釣り目の大きな棗の瞳が
自分を見た。

「で、あんたは何者なんだ?」

棗はしばらく間をおいて、
何者に見える?と聞いた。

「俺を誘惑して
狩ろうと狙うハンター?」

そう言えばさっきもハンターかと
言っていたことを思い出し、
ハンターって何なのと口にする。

玲はその質問に少し目を丸くして
棗を黙って見つめた。
その言葉が真実かどうか
推し量っているようだ。

「ヴァンパイアを狩って金を稼ぐ
醜い人間たちのことさ」

憎悪の色がゆらりと
闇色の中に漂うのが見えた。

狩る、ということが
何を意味するのかその時の棗には
具体的に頭に浮かばなかった。

ただハンターというのは
人間だという事に少し驚いた。