玄関に行くと玲が立っていた。
もう帰るの?と聞いてくる。

屋上も使えなくなったため
仕方なく棗は教室に戻った。
午前中さえいれば
出席扱いになるので
なんとか耐えて昼休みに
迎えを呼んだのだった。

靴箱にもたれて
自分を見つめる玲を
棗は横目で見た。

近くに立つと170cm近い
自分より目線がだいぶ上で
背が高いことに気づく。

玲はブレザーにニットの
カーディガンを合わせ
学校指定とは違う
赤のネクタイを締めていた。

派手な色だが瞳の色と
よく合っている。

「礼くらい言えよ、
俺のおかげで助かったんだから」

棗はため息を吐いて
呆れた視線を玲に向ける。

「あなたが騒いだから
先生が来たのよ」

体育教師の中川に
見つかった2人だったが
玲が暗示をかけ
その隙に逃げてきた。

吸血鬼は血を吸うだけが
能力ではないらしい。

あの瞳にじっと見られると
暗示にかかるのだと
棗はなんとなく思った。