食事、と聞いて人間を
見下したような言い方に
ムッとする。
棗は深いため息を吐いて、

「先にここに来たのはわたしよ」

と言った。

臆することなく棗は玲を見返す。

どこからどう見ても
外見は人間だった。
色が見えなければ
棗もわからないだろう。
深い闇の色、人間と違って
なんてシンプルなんだろう。

思わずじっと見つめる棗に、
なんだよ、と不機嫌そうに
玲は呟く。

「いいえ、わたし寝るから
邪魔しないでね。
食事をするなら他でどうぞ」

それだけ言うと棗は
コンクリートの上に寝そべった。

まだ鈍い頭の痛みが続いていた。
こんな事なら気分が悪くなった時
屋敷からの迎えを
呼べばよかったと後悔する。

玲は自分の目の前で無防備に
横になった棗に唖然とした。
今までに自分に対して
こんな行動をとる女を
彼は見たことがなかった。

「…まだ俺の話は終わってない
何で俺の正体がわかった」

玲の問いかけに棗は答えない。

「このっ…起きろ!話を聞け!」

「…うるさい」

そう言って睨むと玲の綺麗な顔が
怒りに歪んだ。

「こらぁ!誰だ屋上にいるのは!
ここは立ち入り禁止だぞ!」

出入り口のドアが勢いよく開き
男性教師の声がする。




棗はため息を吐いて空を仰いだ。