突然上から降ってきた声に
玲は驚いて顔を上げた。
そしてそれが棗だと気づくと
顔をしかめた。

「またお前か…」

自分を睨む玲に棗は苦笑いした。

どうやら笑顔と丁寧な口調は
女を口説く時だけらしい。

「朝も昼も…いまどきの
吸血鬼って元気なのね」

正体を言い当てられ玲は
怪訝な顔をして、
吸血鬼じゃなくヴァンパイアだ
と言った。

さして興味もなさそうに
棗はふーん、と呟いた。

玲が指を鳴らして合図すると
女生徒はフラフラした足取りで
出入り口から出て行く。

「さてと」

改めて玲は棗の方を見る。

棗のいる高さ3m近くある
屋根の上に
軽く地面を蹴っただけで
玲はふわりと飛び乗った。

柔らかい癖のあるブラウンの髪は
陽に透けてさらに明るく感じる。
耳を隠すくらいの長めの髪が
風にふわふわ揺れた。
少し赤味がかった紅茶色の瞳が
棗を見据える。

「お前何者だ、ハンターか?」

質問の意味がわからない
棗は首を傾げる。

その様子に少し苛立ったのか
俺の食事の邪魔をするな、と
荒い口調で言った。