手に付いた錆を払い
おもむろにそこに寝転がった。
ぼんやりと空を眺める。
綿雲が優雅に
右から左へ流れていく。

まだ薬が効いているのか
すぐに眠くなってきた。

目を閉じかけたその時、
鉄の扉が鈍い音をたてて開いた。

「ようやく2人きりになれたね」

「玲クン…」

聞き覚えのある声に
棗は目を開けた。

下を覗くと2つの頭が
重なり合うように動いている。
女生徒の方はよく見えないが
明るめのブラウンで
癖のある少し長めの髪の男は
どう見ても玲だった。

「ホントにわたしだけを好き?」

女生徒が上目遣いに玲を見たので
はっきりと顔が見えた。
気付かれたかと思ったが
女生徒は玲に夢中のようで
棗のことは気にも留めない

「俺はウソはつかないよ?
俺の目を見て…」

まるで呪文か催眠術のように
玲の言葉に女生徒の目は
トロンとしていく。

「イイ子だ。
素直な子は大好きだよ」

顎に添えられた玲の手が
首筋をなぞる。
玲はゆっくりと彼女の首筋に
顔を近づけた。





「…そこまで」