まったく、のんびり眠れない。
心の中で文句を言いながら
棗は廊下を歩いた。

時計はまだ10時過ぎを
差していて早退するには早い。
自分のクラスの階を通り過ぎ、
さらに上を目指した。

4階、踊り場の立ち入り禁止の
ロープをまたぎさらに階段を上る。

重い鉄扉を押すと
外の爽やかな風が棗を包んだ。

少し肌寒いが教室にいることを
考えたら色が見えない分
何倍も楽だ。

扉の反対側へと歩き
少し高い所に付いた
梯子を見上げた。

出入り口と校内に続く階段を
囲むように造られた
コンクリートの建物は
平らになった屋根の部分に
梯子で登れるようになっている。

背が高くないと難しいが、
棗は慣れた手つきで
梯子をつかみ足の力で
コンクリートの壁を登る。

梯子に足が届くとそのまま
難なく登り切った。