オドオドと声をかけてきた
女生徒を棗は一瞥する。

「…そこのあなた」

威圧感のある声に小柄な女生徒は
さらに身体を縮めた。

「あなたに足りないのは
上を向く勇気と、
自分を信じる気持ちです」

棗の言葉を女生徒は
目を丸くして聞いている。
さらに棗は続けた。

「こんなジメジメしたところで
泣いていても何もならないわよ」

「ジメジメしたところって…
西園寺さんたら」

蘭は棗の言葉に
思わず苦笑いした。

相変わらず女生徒は
茫然と棗を見つめていたが、
棗はくるりと向きを変えると
そのまま保健室を後にした。