時計を見ると七時。いつも30分嘘をつく。『うるえーな!起きてるよ!』と大声で叫

び返した。これがきまった朝の挨拶だった。乱れた布団を直し、まだうっすらボーとす

る頭を叩きながら自分の部屋から出ていった。『今日私仕事で遅くなるし、父さんも遅

くなるみたいだから、おばーちゃんと二人でご飯食べてね』とかーちゃんがいった。

『んーわかった。今日まき家に来るから三人前作っといて』と髪の毛をセットしながら

言うと『アラ!マキもう修学旅行から帰ってきたんだ!!って三人前ってあんた家は食

堂じゃないのよ!』と飽きれた顔で言っている。すると、すーうと奥の部屋から『おは

よ!りょう今日何食べたい?』とニコニコと出てきた。ばーちゃんだ。*松山タネ*7

5歳。昨年、夫(まぁおれのじいちゃん)を無くし一緒に暮らし始めた。ばーちゃんは

≪THE日本の女≫と言うぐらい腰の低い人だった。一番風呂にはいるときも孫の俺にさえ

「先に頂きます」とか寝るときでも『先に休ませてもらいます』と本当にこっちが申し

訳無くなる。昔からばーちゃん子だった俺は今でもばーちゃんだけには頭が上がらな

い。死んだじいちゃんはすごく厳しく、こわい人で怒るとお気に入りの木刀でよくケツ

を叩いてきた。じいちゃんの口癖は『何でも一番になりなさい』だった。そんなじいち

ゃんと約50年、供にしてこれたのは、この優しいばーちゃんだからだ。かーちゃんもよ

く『これで、ばーちゃんも厳しかったら私はグレてたよ』というぐらいだった。