「ただいま、母さん！！今日は有希の家に行くから。」

この台詞を言いながら、
僕は靴を脱ぎ捨て自分の部屋に駆け込む。
時計を見ると13時まであと10分ほどだった。

有希の家までは走っても15分弱かかってしまう。
ﾗﾝﾄﾞｾﾙを投げ捨て、お気に入りのｼﾞｬｲｱﾝﾂのｷｬｯﾌﾟをかぶり僕は家を出ようとした。

しかし、それは敵わなかった。
母が僕の腕をつかみ、居間に引きずり込んだのだ。

「こら、春！！ご飯は食べて行きなさい！！
　どーしてこの子はこーなのかしら！！！」

ぶちぶち文句を言いながらご飯を運んでくる。
どうしても母だけには敵わないのだ。

少しでも反抗しようものなら倍以上の言葉が返ってくる。
この家の暗黙のﾙｰﾙ『母の言うことは絶対』
これは父も守っていたりする。

ご飯を口へかきこんで僕は家を飛び出した。
背後から母の「18時には帰ってくるのよ」の大声が響いていた。