それは親友―佐藤有希(ｻﾄｳ・ﾕｷ)―だった。
有希は僕のたった一人の友達と言ってもいい。

彼とは幼稚園からの付き合いだ。
お互い勉強も運動も出来ないもの同士で話があった。
僕は春と書いてｼｭﾝと読むので彼は僕をﾊﾙと呼ぶ。

最初は女子みたいで嫌だったが今はなんとも思わない。
僕は彼をかなり慕っていた。

「うん暇だよ。有希の家行っていいの？」

彼の両親は共働きで帰りも遅い。
八百屋をしている僕の家とは違い羨ましい。

しかし、彼はいつも誰かいる僕の家を羨ましいと言う。
だから彼はよく僕を家に招いてくれた。
彼は寂しいのだろうと最近気づいた僕だった。

一度帰ってからじゃないと母に怒られるので
13時にﾕｷの家に行くと約束して僕たちは別れた。
僕の家と彼の家は学校から反対方向だ。

「んじゃ、13時な！！」

そう言う有希の顔はひまわりが咲いたように嬉しそうだった。
それを見た僕も嬉しい。

家がもっと近かったらな…といつも思う。
僕は無いものねだりなのだろうか？