宇宙の家に着くと、たくさんの黒い服を着た人達がいた。
涙を流す人、泣く人の肩を抱いている人。

僕は人を掻き分け家の中に入った。
「春君!!」僕の名前を呼ぶのは宇宙の母さん。

「春君、ごめんね…ごめんね……」

そう言いながら僕を宇宙の眠る箱の前に連れて行った。
花がたくさん入った箱に宇宙は眠っていた。

出逢った頃と変わらず綺麗だった。
「宇宙、起きて」そう言えば今にも動き出しそうなほど、綺麗だった。
不思議と涙は出なかった僕。

「宇宙は…最後まで、春君には言わないでと言ってたわ…。
 必ず良くなって…春君と有希君と……また遊ぶって……
 だから言えなかった…宇宙の気持ちを思うと……ごめんなさい…」

泣きながら真実を告げる宇宙の母親。
宇宙らしいな…僕はそう感じた。
今思うと、宇宙には自分の話ばかりしていたように思う。
それでも僕は宇宙とはどんな人間か…判っていたに違いない。

「有難う、おばさん…。宇宙の気持ち…優先してくれて有難う……」

そして、僕は最後に宇宙に告げた。

「宇宙。また…遊ぼうね…」

さよならを言わなかったのはまた逢えると思ったから?
それとも受け入れられなかったから?