ハァ…ハァ…

どれくらい走っただろう。
頭の中はもうぐちゃぐちゃで、何も考えられない。

スピードを落としその場に立ち尽くす。
空は曇っていた。
僕と同じで曇っていた。

ふと、横を通り過ぎるおばさん二人の会話が耳に届く。
それは偶然、本当に偶然だった。

「向かいの望月さんのお嬢さん。
 昨日亡くなったんですって…まだ5年生だったそうよ…気の毒よね…」

自分の母親から聞くより、より現実を突きつけられたと思った。
それでも僕は信じたくなかった。
おばさん達に宇宙の家の場所を聞き、僕は足早に向う。

空からは少しずつ雨が降ってきた。
それは生きられない宇宙の涙か、天使を失った僕の涙か。