目の前でサトシが店員を捕まえて会計を済ませている。

電話の向こうでは、アイと名乗る女の子が泣きながら早く来てと言っていた。

状況がよくつかめないまま電話を切り、店を出てタクシーで中央病院へと向かった。

無言で俺と一緒についてきたサトシも、俺が離した電話の内容を聞いて小さくため息をつくと、外を見つめてポツリと「ごめん」とつぶやいた。

アイちゃんの電話では、ヨウコが病院に居ることしかわからなかったけど。

泣きながら俺に電話をかけて来たってことは、俺が関係しているとしか思えなくて。

もし、俺のせいで彼女の身に何かあったのだとしたら、思い浮かぶのは夏休み前の誤解。

今俺の横で悩んでいるサトシも同じことを考え、そしてすべては自分のせいだと考えているのだろう。

「まだ、何がどうなっているかわからないよ」

そんなサトシを慰めると言うよりは、自分自身に言い聞かせるようにして口に出した時、病院に到着した。

ナースステーションで説明をすると病室に案内されたものの、面会謝絶だと言われて。

病室前のソファに座り顔を覆っている女の子が俺たちの気配を感じたのか、顔をあげた。

「あ…」

泣きはらした顔をしているのは、ヨウコとよく一緒にいた女の子で。

そうだ、この子がアイちゃんだ。

ようやく電話をかけて来た女の子と、ヨウコがいつも一緒に居る女の子が結びついた。