あの暗い中でこれだけの写真を撮れるなんて、すごくないか?

「どこで見てたんだよ」

「最近の携帯電話についているカメラはやっすいデジカメよりもすごいんだよ」

胸を張って得意げに話すサトシを睨みつけると、怖い怖いと肩をすくめて携帯を閉じた。

「おい、消せよ」

「いやだね。お前も女の子といいことするんじゃん」

「…見てたならあの状況がそういうことじゃないってわかるだろうが」

おふざけで撮ったにしてはよく撮れている写真を、消す消さないでもめていると後ろから声をかけられて。

「何の写真なの?」

誤解を招くから、出来れば一番知られたくなかった人…ヨウコだった。

「あ…」

サトシの手元にあった彼の携帯をすっと覗き込んだヨウコは、一瞬にして顔色を変えてしまった。

笑顔だったのに、血の気が引いて青白くさえ見える…。

「あ、いや、これはね、ヨウコちゃん!」

「…ごめん、帰るね」

「ヨウコ!」

慌てて食堂を出ていく彼女を、俺も慌てて追いかける。

普段のんびりしているように見える彼女の足はとても早くて。

急いで追いかけたけど広い大学内で彼女を見失ってしまい、慌てて携帯を取り出して電話をかけるものの電源を切られていて彼女にはつながらなくて。

電話してほしい旨をメールしたけど、翌日になっても彼女から連絡が来ることはなかった。

大学へ行って彼女の友達を見つけても、あからさまに俺を避けるかのように無視をされて、話しを聞いてももらえなくて。

そのまま夏休みを迎えてしまった。