思わず彼女を突き飛ばすように離すと、勢いで尻もちをつかせてしまった。

「いったぁい。ひどいじゃない」

お尻をさすりながら起き上がる彼女の言葉に、どちらがひどいのかと呆れてしまう。

断っている俺に、いきなりのキス。

自分が何をやっているのか、この子はわかっているのだろうか?

それとも、酔っぱらっていて、明日の朝にはすっかり忘れてしまっているとか?

「これ以上しつこく着いてくるから、このまま交番へ行くけど」

駅前の、今いる場所から少し離れた場所には、赤いランプの灯った交番があって。

深夜だけどちゃんとお巡りさんが中に居るのが確認できる。

「え、やだ。どうして?」

再び涙を目に浮かべる彼女を見て、大きなため息が出てしまう。

「クラブへ戻るのか、家へ帰るのかは自由だけど、俺は相手を出来ないから」

じゃあ、とその場に立ち尽くす彼女を置いて、急いで駅へと向かう。

後ろの方で俺の悪口を叫んでいるのが聞こえたが、もうここまできたら無視するしかなくて。

飛んだ迷惑だと思いながらちょうどやってきた最終電車に乗り込んだ。