「ちょ、おい!?」

背中から腰へとまわされた細い腕は、彼女のもので。

ぎゅっと体を俺に密着させて、離れたくない!などと騒ぎ始めてしまった。

「いや!帰さない!」

「ふざけんなよ」

人通りが少なくなってきている時間帯とはいえ、駅が近いここではそれなりに人が行き来している。

こんな時間に、女の子に大きな声を上げることが出来ない俺は、小さくつぶやいてから再び彼女の腕を引き離した。

「もっと他に遊んでくれる奴、幾らでもいるだろう?俺は無理だから」

彼女の目を見てそう言うと、大きな目から沢山の涙があふれ出してきた。

女の子の涙には、本当に参ってしまう。

そんなに強く言ったつもりもなかったけど、ここまでするような女の子が、これくらいのことでなくとも思っていなかった俺はどうしたらいいのかわからなくて。

「タケシくん、お願い…」

涙を流しながら、悲しそうに俺に抱きついてくる彼女。

そう言えば、俺はこの子の名前すら知らないのに。

「…無理だから」

背中にまわされた腕をそっと引きはがすと、彼女が急に俺の首に手を回してきたかと思うと一瞬の間にキスをされてしまった。