彼女が何を懐かしいといったのか、俺はただそれが知りたかっただけなのに。

足を止めた俺を見て、少しだけ寂しそうな顔をしたルナ。

でも、次の瞬間にはまた前を見て空いている手でブランコで遊ぶ子供達を指差した。

「姉弟かな。あんな風に公園で遊ばなかった?」

兄弟のいない俺は、いつも1人で公園へ行ってはその場にいた子と一緒に遊んでいたけど。

ブランコでも遊んでいたと思う。

「私はよく弟と遊んだんだよね」

今、初めてルナの口から彼女の身内の事を聞いたんじゃないだろうか?

俺が聞いてもごまかすようにどこまで本当かわからないことを言っていたルナ。

「弟がいるんだ?」

「まあ、弟みたいなのが、ね」

やっぱり曖昧な事を言う彼女は、俺の手を離してゆっくりとブランコの方へ歩いて行った。

慌てて彼女を追いかけると、ブランコの隣にある小さな鉄棒にヒョイッとおしりから飛び乗り、腰かけた。

「鉄棒ちっちゃ!」

そんな風に無邪気に笑いながら、子供の頃逆上がりが出来なくて、暗くなるまで公園で練習したことや、弟が逆上がりが上手でいつも悔し泣きしたこと等を話してくれた。

子供の頃の俺はチビで猿みたいに何にでもよじ登っていて。
鉄棒も得意で、クラスの誰よりも上手だった。

「今でもできるかな」

一番縁にある大人用の大きな鉄棒の前に立ち、勢いをつけて逆上がりをしてみた。

「すごい!」

ぐるん、と勢いよく回った俺は、鉄棒の上から得意気にルナを見下ろした。

「俺もまだまだいけるね」