私の背中に手をやり、店の入り口まで一緒に来てくれた。


くるりと振り返り、


「今日は、ありがとう。楽しかった。
お客さん待ってるから、早く戻った方がいいわよ」


彼にそう言うと、


「表まで送りますよ。さ、行こ」


「え?ちょ、主役が消えたらマズいよっ!市居くんっ!」


強引に私の手を引き、店の前の階段を上る。


私の手を繋ぐ市居くんの手が、とても温かくて、


正直、離したくないな、と思った。


表に出ると、通りを行き交う車から、


タクシーを呼びとめ、


私に乗るように促してくれた。


「実さん、今日はありがとう。来てくれて嬉しかった。

仕事終わったら、ちゃんと真っすぐ帰るんだよ。」


タクシーのドアが閉まる前に、


まるで、心配する彼氏のように、声をかけた。


「わかってるわよ じゃぁね。」


彼に窓から手を振ると、彼も優しい笑みを私にくれた。