フロアの煌びやかさに目を奪われていると、
私たちの傍に近寄ってきた男性・・・・
「ようこそ、マーメイドへ」
自身の胸に手を当て、
まるで王子様がお姫様を迎えるようなしぐさ・・・
お辞儀をして、上げた顔を見ると
「市居くんっ?!
あ!ごめんなさいっ」
ついいつものように彼を呼んでしまい、口を塞いだ。
だって、いつもの彼とぜんぜんっ、全く!雰囲気が違うんだもん。
光沢のある細身のブラックスーツに、
紫のシャツ。
ネクタイは閉めず、ボタンを3つくらいまで開けて、
胸元に光るシルバーのネックレス。
髪は、ジェルで整えられてて、実際の年より5つくらい上に見える。
それに、なんか、こう、色っぽいのよねぇ・・・・
「いいですよ、実さん。 美耶子さんも、ようこそ さぁ、どうぞ」
少しの間、彼に見とれてると、
美耶子に肘でわき腹をつつかれ、現実に戻った。
彼に案内され、フロアを歩き、席へと促された。
途中、
実さん、と呼ばれ、
手を振る誰かの方へ視線をやると、
いつかのロン毛くんだった。