ミキがアゴをしゃくると、その先に海保のボートがみるみる近づいて来た。

スクラップ船も気づいたのか、船首を陸に向け始める。

「船を止めなさい!」

スピーカーごしに、日本語とあと中国語らしき警告を発して、ボートが近づくが、スクラップ船はゆるゆると岸に近づき、船員たちは今にも岸に飛び移ろうとしている。

ヨースケ、ミキ、ナツと猫耳堂の店長も車から降り岸沿いに様子を伺う。

全員が無意識に、船が近づくほうへと歩き始めていたが、ヨースケが振り返って言った。

「店長、車、奪われないように、このコたちと退避しといてください」

ヨースケはミキとナツのほうを見た。

「オレが巻き込んだんだから、つきあうぜ!」

ミキは腹をくくったように低い声を出す。