「――卒業証書授与。」
そんな司会の先生の声が聞こえ、しばらくして生徒の名が次々と呼ばれていく。
周りからは、鼻をすする音やシャッターの音。時折誰かの話し声がかすかに聞こえる。
―――今日は卒業式。
皆が別れを悲しむ日。
私にとっては違うけれど‥‥
卒業という実感がわかず、1人ぼーっとしていた。
「ふわぁ‥‥。」
と小さくあくびをすると、隣の要に「馬鹿」と口パクされた。
瀬斗と桜井
出席番号順で並ぶと、となりになる。
「瀬斗 美冬」
担任の先生に呼ばれ、小さく「はい」と返事をして、椅子から立ち上がった。