しかし、その足音に気にも留めず、私は空を見上げた。
ずっと見上げていると、なんだか吸い込まれていくような感覚に陥った。
この雪と一緒に、私の過去も溶けて無くなればいいのに‥‥‥
私は空に向かって手を伸ばした。
「‥‥っ琴葉‥」
そんな声に気付き後ろを振り向けば、さっきの足音の人に違いない。
他に人がいないから‥‥
電灯に照らされ見えたのは、綺麗な黒髪に少し雪を乗せた、とても綺麗な顔をした人。
しかし、彼は悲しさと、驚きが混じったような、複雑な表情だった。
そんな彼の茶色の綺麗な瞳に捕らえられ、私はそらすことも、動くこともできなかった。
唯一動いた私の口からは
「‥‥綺麗。」
と一言、心の言葉が零れた。