少し先を行った到着だったから、まだ山川君は
来ていなかった。


「そこまで言うなら
あたしはもうなにも
言わないでおくから。 最後に姿をしっかり
焼き付けておきな、ね ?」

彩芽の気遣いに涙が出そうになった。

山川君が門から出て行く時が来た。

あたしは最後聞こえるか聞こえないかの声で

「美化委員長!
高校に行っても頑張っ てください!」

そう叫んだ。

言い切った安心感に
ホッと肩の力を抜いていたあたしの目に映ったのは、こっちを向いて
微笑みながら軽く会釈した山川君だった。

あの声が聞こえたのか
聞こえなかったかなんて今はどうでもいい。

ただこっちを見てくれた山川君の事で精一杯だったから。