晶が焦り出すと、カイがいきなり言った。

「・・・ミキちゃんの彼氏か?」
「な!?」

 見る見るうちにミキの顔は赤くなっていき、まるで熟したトマトのようである。

「な、なんでそうなるんだよ!?私は一度も・・・」
「えっ?そうなのカイ?」
「そうに決まってるだろヨウ?年頃の娘が家族に紹介するって言うのな、彼氏が出来た時だけだ。」
「い、いい加減しろ!いくら私でも怒るぞ!」
「わーい、怒った怒った!」

 カイは、怒るミキを、さらにおちょくっていく。

(ああ、あんなに無口で怖いミキが子供に見事に遊ばれてる・・・)

 晶がそんな事を考えている間に、ミキとカイの会話は一区切りついていた。

「と、とにかく、二人とも自己紹介」

 ミキがそう言うと、カイが、めんどくさそうに自己紹介を始めた。

「んじゃ。まあ、神楽カイ12歳。一応小学生。」

 カイに続き、ヨウがオドオドと自己紹介をした。

「ぼ、僕は神楽ヨウ・・・これから仲良くして下さい」
「あ、ああ。よろしくな」

(カイはイタズラ好きで活発、ヨウは内気で丁寧って感じだな・・・)

 一通り自己紹介が済むと、さっきの姿が嘘のようにミキは冷静になっていた。

「それじゃあ、これでここの二人の紹介は済んだ訳だ。次は・・・葵さんでも紹介するか。さあ、行くぞ」
「えっ?ああ」

 二人が出て行こうとすると、ヨウが名残惜しそうに声を掛けてきた。

「もういっちゃうの?」
「ああ。俺、今日ここに来たばかりだから、色々と案内してもらってるんだ。ごめんな」
「そうなんだ・・・。うん、分かった!またね~!」

 二人は、ヨウとカイの姉弟の部屋を出ると歩き出した。
 廊下に設置された窓からは、秋風に吹かれて落ちていく落ち葉や、揺れる木々、そして、隣の家などが見える。

 晶はふいに、何故ここに幼い子供が二人で住んでいるのか気になった。
 聞いてはいけないような気もしたが、その気持ちよりも、「知りたい」という好奇心の方が勝ってしまった。