「まあ、そういう事だから、ミキ君に案内してもらって。それから、君がさっきいた部屋、あれが、これから先の君の部屋になるからね」

 そう言うと、大樹はさっさと行ってしまった。こうなると、必然的に晶とミキだけになる。
 暫くの沈黙が続いた。

(き、気まずい・・・・)

 晶は、何とか現状を打破すべく、自分からミキに声を掛けることにした。

「ま、まあ、そういう訳で、これからお世話になります神野晶です。よろしく」
「月野ミキだ・・・よろしく。それから、私に敬語は使わなくても結構だ」
「は、はあ・・・」
「行くぞ」

 それだけ言うと、ミキは歩き出した。慌てて晶は後を追う。

(な、なんなんだよこの子)

 それから暫くの間、ミキは事務的に一つ一つの部屋を紹介していくと、一つの扉の前で急に足を止めた。

「ど、どうしたんだ?」

 晶が聞くと、ミキは、凄く真剣な顔で答えた。

「いいか、これから私達の仲間を二人紹介するが、くれぐれも周りには注意してくれ。いいな?」
「あ、ああ」

 それから1テンポおいて、ミキは扉を開く。すると、ミキは迷う事無く屈んだ。それとは入れ違いに人形がミキの上を通り過ぎ晶にクリーンヒットした。

「な、なんだ!?」

 それと同時にワーワーと騒ぐ声が響き渡る。

「ヨウの馬鹿!私にもケーキ分けろ!」
「嫌だよ!だって、いつもカイが全部食べちゃうじゃん!」
「ヨウのくせに~!」

 その会話の中、絶えずクマやオオカミのヌイグルミが飛び交う。
晶が当たらないように、しゃがむと、ミキが歩腹前進していた。

「い、一体どうなってるんだ!?」
「ここの二人はいつも喧嘩してるんだ・・・オイ!お前等、静かにしろ!」

 ミキがそう言うと、飛び交っていた人形の発射が止まった。
 どうやら、一時休戦になったらしい。

「もう大丈夫だ。立ってもいいぞ?」