あたしの好きな人。
かっこよくて、皆の人気者の森田くん。
隣のクラスやねん。
話したこともないし、きっと森田くんはあたしのことを知らない。
森田くんが大好きなこの気持ちは完全に一方通行。
いわゆる片想いです。

「Aクラ体育やってるよー」

友達があたしの肩を叩く。

「ほんまや」

その瞬間からつまらない数学の公式なんてあたしの目に入らなくなって、森田くんを探してしまう。

「あーあれ彼女ちゃうん?」

友達が言う。
確かに森田くんの隣には綺麗な女の子。

「そう…なんかなぁ…?」

「森田くんよりあたし山口くんのがえーわぁ」

あたしの不安をよそに友達は山口くんの良さに付いて語りだした。
そんなの耳に入らない。
…彼女いるの?
“好き"
ただその一言が伝えられたらどんなに楽なんだろう。
言葉にして伝える勇気のないあたしはこうして今日もあなたを見つめることしか出来ません。