「…ここじゃ広すぎるもんな」 蛍は家の中を見渡す。 「…うん」 「あ、これ。おばさんに」 蛍は、綺麗な色の包装紙に包まれた箱を差し出す。 私にとっては見慣れた菓子箱だった。 「ありがとう。よく覚えてるわね」 「そりゃあ何十年もお隣りさんしてるからね」 蛍がくれたのは母の好物だったものだ。