桜咲さんは、油とり紙を灰皿の中に捨てた。
「いきなりでごめんね。桜咲先輩がさ、白鳥さんを好きになったから紹介してほしいって頼まれてて…」
私はこのタイミングで何かを飲むのは失礼だとわかっていたけど、声がでない。

水を一口飲んで「あの、あなたのお名前は?」
「ごめんなさい。もうとっくに言ってたと思ってた。人を紹介するまえに、まず自分が名乗らなきゃねぇ。ほんとごめん。
僕は、高橋。白鳥さんとは同じ会社だけど会う機会もないから、全然知らなかったんです。重ね重ね失礼だよね、僕って。だから、さっき、白鳥さんを見かけた時は嬉しかったよ。…もっと話していたいんだけど、ちょっと…」
「ああ、いいよ、高橋。ありがと!おまえこの後、彼女と逢うんだろ。週末だもんな。大丈夫だよ、俺たちは」
俺たち?
たち?
あっという間に二人きりになった。