「……ははっ、美桜らしいな」

開いた紙を、もう1度丁寧にたたんだ。


空のカップを片手にバーへ下りると、もうオヤジがグラスを磨いていた。



「早ぇな」

オヤジの後ろ姿に話し掛けながら通り過る。

カップを洗おうと、水道の蛇口をキュッとひねった。



「近々、お前にも紹介しようと思う」

「……ああ」

洗ったカップを拭きながら、そうどうにか答える。



あの話を聞かされてから、もう大分経つし。


話がなかったのは、なんかあったと思ってたんだ。



――別れた、とか。