「――ん、帰るっ……ふぁ、」 キスの最中、唇を離した隙にもれる声。 弱々しい力で、俺を胸を押し返してくる。 聞きたいのは―― そんな言葉じゃない。 「――帰さない」 こんなに、ボロボロに弱った彼女をひとり返すなんて…… 到底、……ムリ。 もうどっちみち―― 終電なんてないんだから。 触れるだけだったキスを、だんだんと深くしていきながら 首に巻かれたマフラーの隙間に指を差し込むと、 それをゆっくり解いていった。