「――立てる?」


彼女の前に右手を差し出す。


……けれど。



「……」


一瞬、何かに迷うように視線を宙にさ迷わせた後

ゆっくりと立ち上がる。



差し出された手のひらに、
温もりを感じることはないまま。


そこで、ようやく気が付く。

彼女の容姿に。



あの日、初めて合った日は

すぐに塀の上に跳んでしまって
よく分からなかったんだ。

しかも、暗かったし。