珍しいな、 なんて思いながら。 特に、歩く速度は上げず このままこの道を帰るだけ。 ――そう、思ったのに。 ――『離してってばッ』 その後に聞こえてくるのは、 酔ったオヤジの猫なで声。 次の瞬間には。 「………――ッ」 あと、数十歩歩けばたどり着く、あの角の向こう側。 この街特有の、 眩い光に映し出されるものは。 ―――…影。