何人か髪の長い女は見たものの

あの夜に走った痺れるような衝撃を感じることはなかった。




なにかが、違う―――。



ある夜に焼き付けられた俺の五感がそう叫んでいる気がした。





「真面目に、勉強でもしてくか」

運よく、空いてる席を見つけた俺らは向かい合って腰を下ろした。



さすがに、テストも近いし。




あまり気乗りがしないまま

ゴソッと、バックの中からあまり開かれていない真新しい教科書を取り出した時。



向こう側から、長い髪を揺らした誰かが小走りにこちらに来るのが見えた。