「美桜、美桜っ……」

夢じゃないよな。

今腕の中にいるのは、1度は姿を消した懐いたネコで。

小さい体、長く艶やかな髪。


この――香り。

俺はどうして、こんなにも愛しい香りを嫌いになれたんだろう。


今さらだけど、おかしく思えた。



「み…らい……っ」

消えそうな甘いソプラノで、俺の名前を呼んで。


「無理、だったよ……」

――無理、だったの……。


すがりつくように、俺の背中に手を回して。

弱ったネコは、そう言ったんだ。



「何が……?俺は美桜がいない世界なんていらない」

――美桜がいてくれれば、それでいい。

小さい体を壊してしまわないように、力を加減しようと試みるも。



「ん……っ」

やっぱり加減なんか出来なくて。


思いっきり抱きしめてしまうんだ。