私の手をするりとほどき、女の子は一目散にその男の子の元へと走っていったの。


――『ありがとうございました』

お兄ちゃんの声につられて、女の子もペコッと頭を下げる。



未来もお父さんも、

もし起きて私がいなかったら心配するだろうから、すぐ帰ろうと思ったんだけどね。



――『お父さんに会ってってよ』

――『いこうよ、いこうよっ』

ふたりして、私の手を引っ張るものだから……。

私は誘われるままに、この子たちのお父さんの元へと行ってしまった。



――それが、すべての始まりだったの。

悲しそうな、苦しそうな、そんな母さんの表情は

見ている俺だって、どこか胸が痛んだ。




――『美桜がお世話になりました』

柔らかい笑顔で私たちを迎えてくれる男の人。


私の人生が狂ってしまったのは

歯車が狂い始めてしまったとすれば……


多分、この瞬間なんだろう。