なんだ、これ?
母さんがいなくなった途端、自由に喋れるようになる。
さっきの会話はまるで……
あらかじめ用意されていた会話のようだった。
「美桜ちゃん」
「……?」
「その子に会えなくなるかもね」
どういう、ことだ……?
俺が万が一、行動を起こせたとしたら……美桜、が――?
会えない?
それは……もし、目覚めた時、現実に戻った時。
“美桜がいた”
その記憶がまるごと失われるってことなのか……?
美桜を……美桜の存在ごと、忘れるって?
「まぁ、それに近いね。忘れるっていうか……」
――君は美桜に出会わない。
“美桜”という人物を知らないまま、未来が書き換えられていく。
言葉を、失った。