背中を伝う、嫌な汗。
嫌なリズムを刻み続ける心臓。
ゆっくりゆっくりその鏡の方へと体を向けていった。
「――…ッ」
“本当に”驚いた時って声も出ないんだ。
やけに冷静に判断する思考。
鏡に映るのは、幼い自分の姿。
「……」
しばらく呆然と見つめていると。
「これは夢だって――分かってるよね?」
鏡の中に映る自分が、冷たい笑みを浮かべながら話し始めた。
全身が凍り付く感覚、冷め切った温度の感じられない体。
指一本も動かせなくなる。
「余計なことはしないでね」
――どうして君が、ここに来たのかは知らないけれど。
余計なことをしたらどうなるか分かってる?