さっきのバスルームでの俺を見てシャンプーも使いかけのは処分され、新しいものが置いてある。


今や美桜の香りは――俺には狂気になってしまった。



ふたりの話を聞く限りでは、美桜はまだ見つかっていない。

どこに行ったのかも。


今の俺じゃ……美桜を探すことも出来なければ、


「はは、ひでぇ……」

ガラスに映るのは、やつれた自分の顔。

目元に深く刻まれた濃いクマ。


――この家を出るのも難しい。



汗でベタついた肌を、熱いシャワーで流していく。



「……っ」

乾いたバスルーム内が、熱い湿気で溢れ出す。

ただ、それだけで……どうしてもあの光景を思い出してしまう。


美桜の香りが残る、まだ湿り気を含んだバスルームを。



ただ、今は――

自分が回復しなければ……立ち上がらなければと、思う。