「何で……っ…」
俺のそばから離れるなよ――!
きっと、まだ近くにいるはず。
俺は店のドアを乱暴に開け放つと一目散に駆け出した。
……どこに…
どこにいるんだ美桜……っ。
無我夢中で、美桜の姿を探す。
――けれど
「はぁ……っ」
情けなく、息切れをしたこの体には限界が近付いていた。
「もう、少し……」
ネオンの街を繰り返し3周くまなく走った後、今度は駅の方まで範囲を広げた。
「くそっ、……なんでいないんだよ」
見慣れた小さな背中、俺の好きな長くて艶やかな黒い髪。
そして……あの、香り。
「……っ、」
ふと、美桜の香りが鼻をかすめた気がして。
走った先に着いた場所は――。
「……桜」