はぁ、はぁ……と、殴られたソイツは荒い息を吐き出していて。
こんな奴が美桜に触れていたかと思うとおかしくなりそうだった。
裸の美桜、俺のベッドのシーツにくるまって。
「私が……悪いの…」
――こうなってしまったのも、お兄ちゃんがこんな風に変わってしまったのも、全部。
「ごめんな、さい……」
こんなに弱ったネコは、初めて見た。
震える肩、小刻みに震える血色の悪い小さな唇。
白い頬の上、乾いた涙の上からまた新しい涙が上書きされていく。
でも……俺には何がなんだか分からなかった。
勝手に俺の中で、解決したなんて思い込んで。
それは、俺と美桜での間のことであって。
目の前には……俺が立ち入ることが出来ないふたり。
――兄妹。
「まだ解決なんてしてないんだよ」
上から見下される、視線。
「オレの父親とお前の母親。偶然惹かれ合った訳じゃない」
――ミオが関わってんだよ。
「そんなのお前は知らないだろ」
最後にその言葉を俺に浴びせるとソイツは窓から落ちるように姿を消した。